高次脳機能障害でお悩みのかたへ

私は、ある日突然、交通事故被害者家族になりました。
交通事故というのは、新聞やニュースで見るだけのものだったのが、当事者になり、被害者の精神的苦痛や、ただ嘆き悲しんでいるだけではすまないとう不条理なできごとがあることを知りました。
そんな時、被害者家族会(NPO法人)代表のお誘いで、NPO法人のお手伝いをすることになりました。
その活動のなか、交通事故被害者にも様々な傷病や様々な状況があることを知り、NPO法人での被害者サポートの限界を感じ行政書士資格を取得しました。
その被害者家族会で知り合ったのが、弊法人の前代表です。
弊法人が交通事故被害者のサポートを始めたのは平成20年頃です。
高次脳機能障害という傷病は、一般にはもちろんのこと、医療現場でさえなかなか理解されていないというのが現状でした。

 

私が高次脳機能障害の方々のサポートを始めたころ、四国の方からご相談がありました。
ご家族のお話では、ご主人が交通事故に遭い頭部を打った。仕事はできなくなったし、表情も極端に減った。
毎日家にボーっとしているだけです、という内容でした。
弊法人にご相談に来られるまで、色々な病院を受診され「脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)」という傷病名がついていました。
HPに「高次脳機能障害を支援しています。」と書かれている病院も受診されていて、その病院では「怠け病です。」と言われたと奥様は泣いておられました。
交通事故に遭い頭部を打ち、その後、物覚えが悪くなった。や、乱暴になったという変化があっても、医師には「交通事故に遭ったショックでおこっているものなので心配はいりません。しばらくしたら治ります。」と言われることが多くありました。

平成13年度から「高次脳機能障害支援モデル事業」が始まり、その後、各都道府県に高次脳機能障害支援拠点機関が置かれました。
厚生労働省が定めた高次脳機能障害の診断基準は下記になります。

  • Ⅰ.主要症状等
    1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
    2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
  • Ⅱ.検査所見
    MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。
  • Ⅲ.除外項目
    1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。
    2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
    3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。
  • Ⅳ.診断
    1. I〜IIIをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
    2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
    3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。

なお、診断基準のIとIIIを満たす一方で、IIの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。
また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。

上記はあくまで医学的な診断基準であり、自賠責保険においては、上記基準を満たしていても高次脳機能障害が認められないことがあります。
自賠責保険の後遺障害認定において、一番重要なことは「その事故で受傷した。」ということになり、それを医学的に証明する必要があるからです。

10年程前になりますが、交通事故で頭部打撲し、記憶障害・遂行機能障害を感じておられる方からご相談がありました。
神経心理学的検査を施行していただき、明らかに不自然な数値が出ているにも関わらず「味覚•嗅覚が脱失しているから、それが気になってこのような数字がでているだけです。異常無しです。」と、医師はおっしゃいました。
ご高齢の方で、受傷前までは会社の顧問として働いておられた方や、受傷前は一人で住み、毎日散歩したり、畑を耕したりして楽しく過ごされていた方が、受傷後ご自身では何も(自分で食べることさえ)できなくなったのに、医師には認知の進行と言われ、そんなものかと思いながらも納得できずご相談に来られるご家族が多くいらっしゃいました。
高次脳機能障害は脳損傷に起因する認知障害全般を指すため、医学的に証明する方法が難しく、診断基準確定前には「何かおかしい。」と後遺障害診断書に書いたことがあると、言われていた医師もおられました。

 

高次脳機能障害診断基準が確立したことによって、診断基準を満たせば良いということにはなったのですが、交通事故による頭部外傷での高次脳機能障害の証明は、厚労省の高次脳機能障害診断基準とは少し違った診断基準があるため、頭部外傷後、性格等に変化があっても、高次脳機能障害と認められないケースも多くあります。
最近ではメディアで取り上げられることがあり、高次脳機能障害という言葉は知られてきたので、交通事故による高次脳機能障害の被害者請求をサポートされる士業が増えてきたように思います。
受任された士業が高次脳機能障害をご理解されたうえで解決され、ご依頼者も納得されれば本当に良いことだと思いますし、多くの方は納得された結果を得られているのだと思います。
しかしながら、弊法人には『被害者請求を士業に依頼したら「(任意)保険会社に事前認定してもらう方が早いからそうしましょう。」と言われたのですが、そうですか。」とか、「主治医に記載してもらってください。と後遺障害診断書だけ渡されましたが、それで大丈夫ですか。」というご相談がよくあります。
また、いまこういう状況でこういう対応をしていているのですが、このさきどうすれば良いですか。と現状を話された後、「士業に依頼しているが、この先どう進めれば良いかわからない。」というご相談もよくあります。
何故、弊法人に電話をかけてこられるのではなく、依頼されておられる士業に電話をかけ、疑問に思っておられることをお聞きにならないのか不思議に思います。

誰にサポートをご依頼されるかは、当事者やご家族が決められることです。
弊法人にご相談に来られる前に色々な所に相談に行かれ、色んな手続きを進められてから弊法人にご相談に来られる方がおられます。
そのころにはもうどうしようもなく、残念ながらお断りすることもあります。

もうかなり前のクライアントですが、たまに電話をくださり、私たちの健康を気遣ってくださる方がいらっしゃいます。
また、何か法律的なことでお困りになった時に、誰に聞いて良いかわからないからと、私たちにお尋ねになる方もおられます。
そんな時、お元気に過ごされておられることをうかがうのを嬉しく思っています。
可能な限りの医証を集め被害者請求をしても、残念ながら非該当になられる方がおられます。
そんな方から「どこも相談に乗ってくれなかったのに相談に乗ってくださり感謝をしています。やるだけのことをやったので悔いはありません。これで前に進めます。」というお手紙をいただいたことがあります。
お役に立てなかったことで心を痛めていたのですが、「前に進めます。」と言っていただき、少しは救われた気がしました。

弊法人は、自賠責保険への後遺障害等級申請しかサポートができません。
私たちがお手伝いできるのは、ほんの一瞬のできごとですが、ご依頼者の人生はまだまだ続きます。
交通事故を無かったことにはできないので、せめて前に進んでいただくためのお手伝いができれば、と思っています。